地震対策のソフトウェア 〜管理上のポイント〜
緊急時対応組織や連絡体制の整備など、管理上の地震対策を立てるにあたって、必要な項目を列挙します。企業の業種や規模などによって検討する必要のある項目は異なります。しかし、災害が発生したときには、企業の規模などにかかわりなく、同じような項目の活動を行わなければならなくなります。
この地震対策ガイドは、本社、本店とは別に支社、支店、営業所、工場などがある企業を主に想定しておりますが、個人営業の事務所などでも、事前に地震対策を検討すべき項目のリストとして活用していただきたいと思います。
緊急時対応組織
「平常時と非常時の組織は基本的には類似のものがよい」というのは危機管理の鉄則ですが、権限委譲と現場にある程度の決定権をもたせるなどの事前措置を講じておかないと、その鉄則もまた役に立たないことになります。震災時には、平常時より動ける社員が減る、キーマンも被災することがあります。最悪のことを想定して組織のあり方を検討します。
●対策本部
本社、本店のほかに支社、支店、営業所、工場などがある企業の対策本部組織は、会社全体の対策本部と事業所の対策本部の2本建が標準です。
《会社全体の対策本部》
会社全体の対策本部の任務は、被災情報の把握、連絡調整、全般管理など企業全体として取り組まなければならない事項です。具体的には次のとおりです。
○ 被災現地からの情報収集
○ 早期支援体制の準備
○ 被災現地では手に余る広報
○ 安否情報の照会対応(情報センターの設置)
○ 協力会社・他事業所などへの応援要請
○ 社会貢献
《対策本部の設置》
対策本部の設置について検討すべき事項は次のとおりです。
○ 設置基準(震度に応じて、例えば、震度6弱で自動的に設置するなどと決めている企業が多く見られますが、
震度にかかわらず、施設、設備や人身に被害があったとき設置するなどの工夫も必要)
○ 設置拠点(予定場所が被災することも想定して代替場所を選定しておく)
○ 組織構造
○ 本部長と代行者(代行者の設置は不可欠)
○ 役割分担の明確化
○ 要員の指名
●被災現地の緊急時対応組織の設置
通常は自衛消防隊組織と同一の任務を遂行しますが、初動対応の項で述べるさまざまな任務を遂行する実行部隊になります。
次の事項を十分に検討します。
○対応策の決定
○役割分担(不在の際の代行者の設置など)
○他事業所等の応援の受入れ
○本社への必要事項の報告(本社でない事業所の場合)
○本社への支援要請(本社でない事業所の場合)
◎緊急時対応組織の任務(例)◎
-班と主な任務-
総括班
○組織を運営し、各班を指揮
○防災対策本部の設営
○食料、飲料水、炊飯用具等の準備
○施設修復のための各種機材の準備
消火班
○初期消火
○非常持出品の搬出
○火気使用設備用具の使用停止と確認
情報連絡班
○消防機関に通報(火災発生のとき)
○社員・家族等の安否確認
○被害状況の把握
○緊急情報の受信および発信
救出救護班
○医薬品・救護機器等の搬出
○けが人等の救助と応急手当て
○要治療者の病院等への搬送
避難誘導班
○安全な場所への誘導および避難指定地への誘導(防災機関の避難命令があった場合)
○避難時の混乱の防止
○避難時の人員を確認
工作班
○施設や設備の点検と応急修理
○復旧のための調査・調達
○緊急物資の調達・手配
○食料、飲料水等の支給
広報班
○マスコミ、行政との連絡
○社内外への広報
●社外への広報
マスコミ対応などの社外広報は被災事業所では荷が重い場合があります。阪神・淡路大震災でも情報収集や連絡、設備の点検・修理などに追われている最中に、新聞等の取材が殺到し、被災事業所では対応しきれなかったという声がありました。被災地外に本社や事業所がある企業では、他の事業所で対応してもらうとよいでしょう。
●非常参集
千代田区に勤める多くの人は、阪神・淡路大震災のように就業時間外に地震が起きた場合には、出社ができません。社員の居住分布を調べ、非常時に招集できる社員を活動要員に任命します。
また、対策本部を被災地外に設置し、そこに参集することもひとつの方法です。いずれにせよ、誰がどこに居住しているか、という社員情報は地震対策上重要な基礎資料になります。
●本社が被災したときの対応
本社としての事業所では、企業の司令塔としての対応について検討を欠かすことはできません。阪神・淡路大震災以後、東京の直下で地震が起きたら、という想定で“本社の被災”が検討されるようになってきました。その際の検討ポイントは権限委譲です。
通常は、本部長の代行者を数次まで決めます。職制の序列にしたがって決めている企業が多いようです。その際、本部長権限を代行者に委譲します。
また、本社が被災した場合には、会社全体の対策本部を他の拠点に設置しなければならないので、代替設置拠点を事前に選定し、準備する必要があります。東京が本社で大阪にも拠点がある企業では大阪に代替本部をおくことを計画している例が多く見られます。
連絡体制
●社内連絡網の整備
緊急時に連絡をいかに早くとるか。これは危機管理の基本的な行動原理です。そのためには緊急連絡網を整備します。役員、活動要員、一般社員、事業所、それぞれの相互間の緊急連絡について検討します。
検討すべき事項は次のとおりです。
○地震発生時の連絡先と連絡ルート
○通信途絶時の対応策
○会社から社員への連絡・伝達方法
情報収集・連絡手段としては、携帯電話、PHS、アマチュア無線、専用回線、トランシーバーが主流です。衛星通信は、日常業務で使用するのであれば、導入を検討しましょう。
このほか、パソコン通信も新しい手段として検討されています。連絡手段には絶対確実というものはなく、連絡手段の種類を増やすことがベターな対策として検討されています。
また、事業所と社員の自宅との情報伝達は、電話が使用できない場合には、自転車・バイクで情報伝達をしたほうが、電話で悪戦苦闘するより効果的です。
◎非常時の通信設備・機器の特徴◎
一般加入電話
いくつかの電話局を経由して、相手方の電話に接続される。災害時にはケーブルが切れたり、通話がしにくくなる。
専用線
特定のユーザーの専用の回線のため、輻輳のおそれが少ない。一般加入電話に比べ復旧が早い。
携帯電話
無線中継局までは無線でつながる。加入者数が増えており、輻輳のおそれがある。
トランシーバー
交信は2〜5kmの範囲に限られる。無免許で使用でき、また安価である。
アマチュア無線
業務のための使用は認められていないが、社員有志による交信は可能。
交信範囲は数kmのものから海外まで交信できるものまであり、資格により異なる。
衛星通信
通信衛星を経由して拠点間の通信を行う。地上の回線が使用できないときに有効。他の通信手段に比べると高価。
パソコン通信
相手が不在でも通信が行える。ISDN(総合デジタル通信サービス)回線を使用すると比較的輻輳のおそれが少ない。プロバイダに対して加入費が必要。
公衆電話
優先回線が使用されるので、比較的かかりやすい。 阪神・淡路大震災の経験から、今後の大災害時には無料化される。
初動対応
●アクションリストの作成
震災当日に実行する行動のリスト(アクションリスト)を検討します。優先順位の高いものから実行します。例えば、次のアクションについて事業所ごとに検討します。
(1) 社内被災者の救援救護
○人的被害状況の把握(安否の確認)
○人命救助
○救護所の設置・運営
○応急手当て(死亡者および重傷者の扱い)
○負傷者の搬送
○捜索隊の編成および捜索
○衛生管理
○遺体の処置(仮安置についても検討しましょう。)
(2) 社員等への対応
○社内にいる社員の安全確保
○避難誘導
○社員の帰宅・残留の指示
○地震情報(交通、火災情報等を含む)の把握
○社員、テナント、来客等への広報(ライフライン、交通網など。地域への情報提供も含む)
○社員およびその家族の安否確認
○社員およびその家族からの照会対応
(3) 二次災害の防止
○出火防止
○初期消火
○社員の帰宅・残留の指示
○緊急停止の実行、保安措置
工場等では、危険防止のために必ず緊急停止手順を決めておきます。
危険物・劇毒物等を取り扱う生産設備は、地震発生時に自動的に停止するようにします。
○防災機関への緊急通報
(4) 施設の安全・復旧へ向けての活動
○建物および構築物等の被害確認
○近隣の被害状況の確認
○緊急通信手段の確保
○会社全体の対策本部への連絡
○緊急点検・応急修理
○重要な記録類の保全(耐火金庫と非常持ち出しの併用が必要です)
○客先・取引先の被害状況調査および対応
○警備・防犯活動
危険な施設等の安全確認制度の整備が必要。
避難後の施設立入制限と施設警備対策を講じます。
○危険物・有害物の管理
○要員の確保
●初動マニュアルの作成・整備
地震対策で重要なことは、地震対策の内容を充実させることです。地震対策のマニュアルを作ることではありません。マニュアルや防災規程は地震対策を社員などに周知させるための手段にすぎません。
初動対応マニュアルは、アクションリストを整理し、行動手順を社員や対策本部要員に伝達するためのものです。したがって、地震発生時の心構えのような事項は不要です。人の命に関わる救出救護についてはマニュアルに頼るのではなく、自動的に行動がとれるように教育・訓練を徹底することが重要です。
初動対応は、対策本部要員(本社、被災現地)、一般社員など立場によって行うことが異なるので、初動対応マニュアルも少なくとも対策本部要員用と一般社員用の2種類が必要でしょう。
また、初動対応時に必要となる安否確認、被害状況把握などのための報告、点検様式なども作成・整備しておきます。
自主的な地震対策や法的な地震防災計画は、社内的にはそれを規程・規則として位置づけ、地震対策を実行することが業務であることを明確にします。社内規程は、防災管理規程、地震防災計画規則などと呼ばれます。
避難・救援活動
●避難
千代田区全域は「耐火建物内残留地区」といって基本的に避難しない地区です。避難は大地震が起きたからといって必ず実行しなければならないものではありません。
ただし、建物が倒壊する危険がある場合、火災が発生し危険な場合、延焼の危険がある場合など建物内に留まると危険がある場合は避難が必要です。避難する場所としては、区内5箇所に指定している帰宅困難者支援場所が挙げられます。 したがって、次の項目について検討します。
○避難の判断(誰が判断するのか、しないのか)
○避難の単位(職場単位か、フロア単位かなど)
○避難場所(帰宅困難者支援場所)の選定
○避難確認(点呼、行方不明者・外出者の把握)
○捜索隊の編成
●応急住宅および救援物資の確保
被災社員とその家族、応援社員などのために緊急に宿泊施設を確保しなければなりません。そのために事前に緊急避難・宿泊施設リストを作成しておくとよいでしょう。
また、救援物資の支給方法、食料・飲料水の配給方法についてもあわせて検討しましょう。
●帰宅計画
帰宅計画には2つの種類があります。ひとつは大地震が突発的に発生した際の帰宅計画、そしてもうひとつは、東海地震の警戒宣言発令時の帰宅計画です。
従来は、東海地震の警戒宣言発令時の帰宅計画だけを立案していたのではないでしょうか。今後は、突発地震襲来後の社員の帰宅計画も併せて立案する必要があります。
警視庁では、阪神・淡路大震災の教訓から厳しい交通規制を敷く計画を立てています。それによると大地震が東京を襲った場合には、おおむね環状7号線内側の都心部が全面通行禁止区域となり、一般車両の通行が禁止されます。また、都県境での車両の流出・流入も禁止され、実質的に一般車両は都心部に入れなくなります。
このため企業は車両が使用できないことを考慮し、社員の残留および帰宅計画づくりが求められることになります。その際の検討のポイントは次のとおりです。
○帰宅の判断基準
○帰宅の手続き(帰宅指示など)
○帰宅の可否(交通機関の運行状況等)
○帰宅時の携行品の配付
○帰宅報告
○帰宅困難者の扱い
○訪問客、顧客の扱い
○出社の判断基準
在宅時の安否確認と安否情報の発信
阪神・淡路大震災以後、多くの企業が安否確認の方法を変えています。安否確認の目的は、もともとは社員が無事か否かを確認することでしたが、今後は社員の救援体制と事業の復旧体制の基礎データづくりも含まれると考えましょう。つまり、救援する側とされる側を明確に分け、どの程度の救援が必要かを把握することも目的なのです。そのためには効率よく、できるだけ早く完了させます。9割程度の社員、顧客、取引先などの安否が確認できればとりあえず救援活動は可能です。その結果、連絡がとれない人の安否確認に注力することができるでしょう。
在宅時に地震に遭遇した場合には、自宅待機としている企業が多く見られますが、早期に安否を確認する方法を検討します。
●社員からの安否情報登録方法の策定
前述のとおり安否確認の目的のひとつは、社員の救援体制と事業の復旧体制の基礎データづくりです。そのため、できれば12時間以内に完了させたいものです。
阪神・淡路大震災の経験から、社員から連絡させ安否確認の迅速化を図る企業が増えました。その際、被災社員から遠隔の事業所に連絡する方法を採用する企業も増えてきました。例えば、東京の近隣に居住する社員は大阪の事業所へ安否の連絡をする、というように決めておくということです。これは電話の輻輳(ふくそう)を避けるという意味で有効な対策です。
また、NTTの全国利用型伝言ダイアル(ボイスメール)やインターネットの生存者情報データベースなどを利用することもひとつの方法です。
●行方不明者の安否確認方法の策定
阪神・淡路大震災では大雑把に言って1000人のうち5人が死亡したことになります。安否確認を考える際にこのことは大切な意味を持ちます。つまり‘安’と ‘否’では圧倒的に‘安’の人が多いのです。社員から電話をかけさせる仕組みでは、電話をしてくる社員のほとんどは‘安’なのです。声を出せない社員の安否確認はマンパワーに頼るほかありません。そのためにも‘安’の社員を早く確認し、緊急時対応や早期復旧体制に投入できる仕組みづくりが求められます。
●安否確認の対象者
安否確認の対象をあらかじめ決めておきます。それは、事前に対象者のリストの整備をしておけば安否確認がスムースにいくからです。対象者は、例えば、社員、臨時社員(アルバイト)、契約社員、関連会社社員、工事人、会社OB、採用内定者などです。なお、単身赴任者(海外駐在員を含む)がいる場合には、家族の安否確認も必要です。
●社員の安否情報の提供
社員の安否情報を、マスコミを通じて流すようにしている企業が見られます。また、阪神・淡路大震災では、商用のパソコン通信ネットワークにより安否情報の伝達が行われましたが、これなどは今後のひとつの手段になると思われます。
社員の家族からの問合せ、顧客からの問合せなどは地域別、職場別、アイウエオ順などにすぐ並び替えができなければ迅速な対応ができません。ホテル、デパート、スーパーなどのサービス業では安否情報の登録と検索をほぼ同時に行える仕組みが求められます。
また、複数の事業所を持つ規模の大きな企業では、家族などからの安否照会電話への対応は被災地外に設置した全社ベースの対策本部に情報センターを設置し、集中的に対応することが望まれます。その理由は、現地の対策本部がこのような電話に忙殺されると、任務の遂行に支障をきたすからです。
緊急物資の備蓄および確保
地震災害のような広域災害では、すぐに緊急物資を手にいれることは期待できません。企業自らが食料等の備蓄をし、防衛する必要があります。
●種 類
次の項目について現状で十分かどうか検討します。その際の視点は、種類と量です。特に、食料・水の備蓄量については3日程度を目安とし、多めに考えましょう。
この中で、地震直後から緊急に必要なものは、飲料水、救助資機材、医療用具、医薬品などの人命に関わるものです。優先的に準備しましょう。
| 項目 | 具体的品目(例) |
| 飲料水・食料 | 乾パン、アルファ化米、缶詰、カップ麺、梅干し、みそ、保存水など |
| 防災資機材 | 防水シート、土嚢、トランシーバー、携帯電話 など | <
| 救助資機材 | 医薬品、包帯、担架、工具(ジャッキ・バール等)、ロープ、切断機 など | <
| 保護用具 | ヘルメット、軍手、長靴、作業服 など |
| その他 | バイク、自転車、テント・シート、寝具、暖房用品・器具、洗面用具、衛生・ 排泄関連用具・用品など |
●保管場所
備蓄品は、万一の際に容易に取り出しができるところに保管します。保管場所が耐震上問題ないか、保管場所までのルートが耐震上問題がないかなどアクセスの容易さを検討しましょう。1か所ではなく、複数か所に分散して保管しましょう。パッケージタイプの食料・飲料水は社員にあらかじめ配布しておくこともひとつの方法です。
●定期的更新
備蓄の最大の問題は管理と更新です。万一の際に、備蓄食料がなくなっていた、電池が切れて使えなかったなどということがないように定期的に更新をします。備蓄品等のリストの更新も忘れないようにしましょう。
●緊急物資の確保
非常用の物資は、備蓄する方法と、非常時に調達する方法の2つの方法があります。業種・業態によっては備蓄よりも調達の方が現実的なことがあります。町会との協力やコンビニエンスストアとの協定などによって食料等の物資を調達できるようにします。調達のメリットは保管スペースや更新について悩まなくていいところにあります。しかし、震災時の交通規制等により調達した物資が予定どおりに到着しなかったり、調達先も被災したりするなど震災の状況によってはデメリットもあります。備蓄と併用することによって調達も有効なことがありますので、検討しましょう。
復旧および事業継続対策
●復旧体制の整備
復旧計画を事前に立案するのは極めて難しいことですが、決められることだけでも決めておきます。なぜなら火災などの一般災害と異なり、地震災害の場合には、復旧要員の減少、協力会社などの同時被災、復旧資機材の調達困難などが予想されるからです。
業種等により内容が大きく異なりますが、一般的に検討する事項は次のとおりです。
○設備の緊急点検/施設の被害状況調査、安全確認
○後片付け
○復旧対策班(対策本部)の設置
○コンピュータシステムの復旧計画
○応急金融
銀行、信用金庫など金融機関とは日頃から信頼関係を築いておくことは地震対策としても重要です。
○相互援助協定
○復旧要員、資材の確保(業者手配)
○ライフラインの確保(電気・ガスなどの供給事業者との連絡調整)
○輸送・交通手段、ルートの検討および確保
○復旧状況調査
○復旧見込の発表
●協力会社との連携
今後の地震対策は本支店間の応援だけでなく、協力会社の応援も視野にいれる必要があります。協力会社との連携を図り、早期復旧するために次のことを検討しましょう。
○協力会社から得られる応援の把握
○協力会社の地震対策策定の支援
●事業継続
事業継続に関する事前対策を検討しておくとよいでしょう。業種等により内容が大きく異なりますが、一般的に検討する事項は次のとおりです。
○地震後の設備点検表の整備
○相互援助協定の締結
○本・支店間の相互応援計画の策定
○顧客リスト/取引先リストの整備
○取引先の分散化
○データべースのバックアップ保管
○重要記録類の保全
●得意先対応
これまでの地震対策では人命安全、資産保全に関する緊急時対応行動が中心で、納品の中止、サービス提供の中断により取引先などの被るデメリットへの対応は含まれていませんでした。しかし、業種等によっては必要な項目ですので検討してみましょう。検討すべき事項は次のとおりです。
○顧客・取引先への情報提供(被災情報、復旧見込、仮店舗等の案内など)
○顧客・取引先への支援部隊派遣
○顧客へ生産、出荷計画の変更連絡・調整
○顧客・取引先へのお見舞い
防災訓練・教育
●防災訓練・教育
いくら立派な地震対策を定めても、地震対策の担当部門しか知らないのでは意味がありません。階層別(新入者、転勤者、管理職など)防災訓練および教育のほかに事業所ごとの訓練や全社一斉訓練などを実施し、社員の危機意識の醸成と初動対応マニュアルの徹底を図ることが不可欠です。
教育・訓練としては、次のようなものが行われています。
○職場ごとの初動対応訓練
○新入者の防災訓練・教育
○定期異動後の防災訓練・教育
○全社一斉の防災訓練
○管理者防災教育
○警戒宣言に関する対応訓練
○交代制職場の訓練
○就業時間外訓練
○区・町会などの地域団体の行う防災訓練
●社員に対する啓発
いわゆるマニュアルと呼ばれるものの定義はあいまいです。社員に配布せずに、職場に備えつけておくものも含まれます。社員の行動基準が記載されているものは、大規模地震警戒宣言発令時の行動基準、地震防災についての行動基準などと呼ばれています。
しかし、社員の危機意識の醸成を図るためには一般社員向けのツールを作成し、行動基準の啓発を図ることが大切です。社員全員に配布するものとして、次のようなものを作成するとよいでしょう。
《行動基準カード》
○勤務時、通勤時、在宅時、出張・外出時などに分けて、行動基準を規定します。これは、パートタイムなどの臨時社員を含め全社員に配布します。そこには地震時の行動基準に加え、次のことを記載しておきます。
1.地震発生に際しては状況に応じた安全確保のための行動を優先する。
○安全確保を第一とする。
○けが人救助。
○火元・電源を切る。
○運転中は、ハンドルをしっかり握り、ゆっくりとブレーキ。
(路肩・駐車エリアに停車し、キーをつけたままでドアをロックせず離れる)
○地震情報を聞く。
2.安全確保後の行動は次による。
就業時間中
一般社員
1. 在席者は以下を取りまとめ、部店長または総務部(以下本部という)あてに連絡
◎社員・家族の安否
◎事務所等被害
2. 外出者は本人安否・現在地と状況を課支社または部店長あて連絡(連絡不能の場合、本部あて)
3. 帰宅は上司指示による。
4. 再出社
◎社員は、家族の安全確保後で可。(バイク・自転車による出社可)
部店長
1. 社員・家族の安否等状況把握
2. 管下事務所の被害状況把握
3. 本部への連絡と指示事項の確認・伝達
4. 連絡先は本部(休日などは本部防災センター、○○、○○を含む)
5. 再出社(又は出社は、家族の安全確保後で可。
外出中・出退勤途中
1. 出社・帰宅を自己判断。
2. 出社者は、以下につき所属長または本部あて連絡
◎社員・家族の安否
◎事務所等被害
3. 帰宅者は、所属長に事後連絡。(連絡不能の場合、本部又は緊急連絡拠点あて)
休日・就業時間外
1. 社員・家族の安否等状況を所属長に事後連絡。(連絡不能の場合、本部又は緊急連絡拠点あて)
2. 出社
◎社員は家族の安全確保後で可。(バイク・自転車による出社可)
(1) 本人や家族の安否、家屋の損害、現在の所在および連絡方法、会社への要望(不足しているものなど)などを会社に連絡すべきであること(絶対に連絡しなければならないような表現は避けます。状況によっては、連絡をしたくてもできない場合があるからです。)
(2) 会社の連絡先(1か所だけではなく、数か所記載できるようにします。)
《社員と家族のための地震対策啓発小冊子》
社内規程ではどうしても社員の家族の安全まで触れにくい面があります。社員とその家族の啓発のために地震とその対策について分かりやすく解説した小冊子が必要です。そのなかには、会社として社員の安全のために実行すること、地震発生時に家族にしてほしいこと、してほしくないことなどを分かりやすく書きます。また、緊急時の連絡先が記載できる1枚ものの連絡カードを作成し、壁に張っておいてもらうと家具等が倒れてもそれを見て連絡ができます。
地域と企業の連携
●地域との協力
震災のような緊急事態には、企業は、地域に住む企業市民として、行政、住民とともに地域の復旧や復興に積極的に協力していく責務があります。災害時に事業所、行政、地域防災組織、町会などが協力しあって、消火活動、救出救援活動、安全・迅速な避難誘導、被災地の秩序の維持などの活動を行っていくことが必要でしょう。そのためには、日頃から事業所は地域と協力し、防災訓練や防災資機材の整備に努めることが大切です。緊急時にだけ協力しようとしても、なかなかうまくいくものではありません。
一方、阪神・淡路大震災はもとより、わが国で90年代に入ってから発生したマグニチュード7以上の大地震を調べてみると、すべて夜間又は未明に起きています。
震災時には助け合いが必要です。千代田区にある事業所には、夜間、休日には人がほとんどいません。こんなときに大地震が起きたらお手上げです。初期消火や防犯などについては、地域のお世話にならざるを得ないのではないでしょうか。地域との協力関係を築き上げておくことが大切な理由のひとつでもあります。
●社会貢献活動
企業の地域貢献や地域に対する支援の実施は、阪神・淡路大震災においてマスコミ等に大きく取り上げられました。自治体等への寄付(社員による募金を含む)、自社関連商品の提供、会社施設(寮、事業所の風呂等)の地域住民への開放や社員によるボランティアなどが多く見られました。
企業によっては災害対策のひとつとして見舞金拠出規定を決めているところもあり、そうした企業は阪神・淡路大震災のときも、見舞金を直ちに問題なく出したということです。事前に自分の会社は被災地に対して何ができるのかについて検討しておくと、迅速かつ効果的な対応ができるでしょう。見舞金や援助物資の提供だけでなく、企業ボランティアなど社員による支援についても検討してみましょう。
地震対策の見直し
地震対策は策定したまま放置せず、メンテナンスが必要です。地震対策は作るよりそれをメンテナンスするほうが何倍も熱意とエネルギーを必要とします。そのために次のような項目について検討しておきましょう。
○地震対策の内容の見直しおよび社員への周知
○地震対策要綱などマニュアル類の定期的見直し
○緊急連絡網の見直し
○安否確認用社員リストの見直し
○重要な記録類の見直し、整備
○福利厚生制度の整備(被災社員への支援策) など